国連 UNDP & UN Womenアジア太平洋地域 女性地位向上のためのNVCトレーニング
女性地位向上に取り組む国連でもNVCコミュニケーション研修は取り入れられ始めています
UNDPとUN WomenによるNVCプロジェクトの概要を、日本語訳にしてご紹介します。
アジアー太平洋地域においても、不寛容や過激主義に火を注ぐヘイトスピーチ、社会的宗教的不寛容、少数民族の阻害、暴力的事件が長いこと起きています。コロナパンデミックは、社会経済的な不安定さを引き起こし、これらのリスクをさらに拡張しています。
これら一連のことは、ローカルな不満や問題から引き起こされていることが多いと言われています。例えば、経済的な除外、阻害、差別、脆弱なガバナンス、解決されていない争い等がしばしば助長している要因です。コミュニティや地元リーダー、宗教リーダー間のコミュニケーションの改善は、これらの要因を認識し、平和的に対応することの助けになります。コミュニケーションの促進は、女性や阻害されたグループの声が届くような機会を提供します。
家庭内の暴力が減少した調査結果があります
コミュニケーションの改善を通して、ジェンダーに対する好ましくないステレオタイプも対処することができます。調査によると、過激な暴力に対するレジリアンスト対応能力を培うためには、男性と女性双方を巻き込んだジェンダー変容アプローチと、コミュニティに内在する害的な権力構造の改革が必要です。
UNDPとUN Women による調査によると、過激な暴力は、既に存在しているジェンダーのステレオタイプに基づくもので、不寛容を助長することがしばしばです。
女性を含む、長いこと阻害されていた人々は、自分たちのニーズを求めるために声を上げることが難しいです。UNDPとUN Women は、画期的なNVC手法を用いて、これらの課題に取り組むことにしました。NVCは、国際的な仲裁や紛争解決に有効であることが認識されています。NVCは、職場や個人間においてコミュニケーションスキルを向上するためにも使われています。
NVCは、自分が必要としていることをどのように効果的に人に求めるか、意見が異なる場合でもどのように傾聴するか、全員のニーズが満たされるような解決方法にどのように到達するかを、人々に教えます。
バングラデシュ、モルジブ、スリランカのUNDPとUN Women は、コミュニケーション、社会的結束、根強いジェンダーのステレオタイプを変えるために、NVC研修を試験的に実施しました。61人の参加者(女性47名、男性14名)が、4ヶ月に渡って9~10日間の研修を修了しました。評価結果によると、NVC研修は全般的に有効で、予測できる改善が認められ、この好事例をスケールアップする計画が作られました。
評価調査によると、とくに受講者の態度と知識に著しい変化が統計的に認められました。男女平等に対する意識の変化、紛争解決のための平和的な手法について計測しました。「男性は、政治や決断に感情的に適している」と考える人は、46%から36%に減りました。更に、過激な暴力を打ち負かすのは暴力によるしかないと考える人は12%から2%に減少しました。
参加者の怒りに対する態度の変化も明らかになりました。もっとも目覚ましい変化は、怒った時に、参加者が扶養者(配偶者、子供など)を叩くことが、22%から12%に減少しました。
怒っている相手と座り、問題について話し合うことができると回答した人の割合が、65%から76%に増加しました。評価調査は、どの国でもどの性別でも一貫して同じような結果が確認されました。
定性的な結果によると、参加者は、自分のニーズを理解して伝えるようになる経験を通して、自信をつけ、アンガーマネジメントがよりできるようになり、傾聴スキルの向上のパターンが確認されました。
このNVC研修は、社会的結合や共通認識を図るのに役に立つ手法であることが実証されました。NVC手法をより社会的結合や平和構築イニシアチブに広く活用することは、男女平等や平和なコミュニティ作りに貢献するので、UNDPとUN Womenは、アジア太平洋地域でこのプロジェクトを継続することにコミットします。
UNDP - Asia and the Pacific- Tolerance and Diversity – “Nonviolent Communication Training in South Asia”
投稿者プロフィール
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アフリカ・途上国支援アドバイザー、NVCトレーナー、メディエーター、コーチ
米フレッチャー法律外交大学院卒(国際関係)。世界60カ国を渡り歩き、アフリカを中心とした30カ国において人道・開発支援に20年従事。青年海外協力隊に参画後、国連職員として難民に対する食糧支援の夢を実現するものの、移動先で開発支援の現実とのギャップに退職。世界放浪の後、再び国際開発コンサルタントとしてアフリカの現場に戻り、紛争影響国の復興支援、難民支援戦略策定、パレスチナ・ガザ調査に従事。東北大震災では緊急医療支援調整員として参加。その後、アフリカ支援を行う財団法人の経営陣として転職。合併直後の組織改革を率いるものの、組織内対立に頭を悩ます。退職後は、職場におけるコンフリクトマネジメントに対応するため、NVCを集中的に学び、現在はNVC認定候補生としてNVCを教える他、コーチングやメディエーション(調停)を行なっている。グローバルな視点から途上国支援・SDGsアドバイザリーを提供し、「世界平和は一人一人の心の平和から始まる」ことを人々に伝えている。
NVCコミュニケーション研修・オンラインセミナーなど
出張にて法人、大学、団体などに向けて講師いたします。
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